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夏の日の香り ハゼとズガニ
JUGEMテーマ:グルメ
![]() 夏休みのお盆に海の側の祖母の家に遊びに行くのが楽しみだった。祖母の家のすぐ裏には、あまり大きくない川が大きな湾に流れ込む河口に水門があり、沢山の海苔漁師の小さな船が係留されている。その場所は潮の満干によって、淡水と海水が入り交じる汽水域になっている。 祖母の家に着いたとたん、庭の納屋に置いてある延べ竿を引っぱり出して、ブリキのバケツに餌箱を放り込んで、急いで裏の川に駆け出て行く。護岸の海藻で滑らないように、牡蠣殻やフジツボで足をけがしないように気を付けつつ、気持ちは早く早くと仕掛けをこしらえ、暴れるゴカイを釣針に、そうしてゆっくりと流れる川にウキを浮かべる。すると、すぐさまウキは水の中に沈み込み、同時に竿を上げると、プルプルと尾を振りながら可愛らしいハゼが繰り返しあがってくる。 いくらか夜のおかずを子供なりに確保した満足感に満たされると、次は足もとの小岩をひっくり返し、そこに隠れているズガニやイシガニを探しまわってあちこち駆け回っているうちにすぐに日が暮れてしまうのである。 ![]() 結局のところ、海苔で滑って泥だらけ、牡蠣殻で擦り傷だらけ。土間のすぐ横の台所にそのまま駆け込んで、ハゼや小さなズガニやイシガニを天ぷらや唐揚げにしてもらう。天ぷらを揚げる良い香りと蚊取り線香の香りが混ざり合う。そんな香りは私のとても懐かしい思い出である。 |
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磯のごちそう
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トリ貝
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タカベ
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羊肉
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貝類の燻製
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隠岐 西ノ島
![]() 島根県、隠岐諸島、西ノ島。かつては縄文の時代から人々が生活し、中世では、遠流の島として知られているが、その姿は今もなお、その時代の姿をそのままにして、訪れた人々の心を圧倒する。 雄大な魔天崖のその空気は筆舌に尽くしがたく、ただただ息をのんで眺めるばかりである。その地の最果ての雰囲気は、人間など全く寄せ付けない自然の畏怖そのものである。 ![]() 広大な島の表層は、たいした森もなく、青々とした牧草地が広がる。今では、その土地の支配者は、今でこそ有名な隠岐牛が、悠々と草を食むばかりである。 ![]() さらには馬達の草を食む音が、これほどまでに耳に響いてくる間合いに驚くばかりである。あとは歩くたびに飛び交う沢山のトノサマバッタが自由自在に風を操る。 ![]() 秘密の場所。昼間の餌取りの雑魚がおさまったあと、悠々と現れるイシダイ。その引きは、一度掛かったら、堅い竿を絞り込み、最後まで勇敢な戦いをみせてくれる。 ![]() 三番叟。能楽、歌舞伎の烏帽子に由来するその縞模様は、まさにこの地に相応しく、その姿は実に美しい。雌は老齢になってもその縞模様を残す。 ![]() この日は出来過ぎである。ほとんどが30センチオーバーの丸々した個体。 ![]() もちろん刺身が旨い。滲むほどの脂が酒によく合う。肝も決して捨ててはいけない。 ![]() 甘い脂が醤油になじむ。飯が旨い。 ![]() 塩焼きは、分厚い皮が旨い。少々磯臭いがそれが釣り人の癖になる。 ![]() ちょっとかわって、身のすり身にチーズを混ぜて、その身で巻いてフライにする。これもまたビールによく合う。 |
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牡蠣 牡蠣 牡蠣
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金木犀の香り
![]() この季節、秋晴れの空にどこからともなく香る風。近所の庭木に植えられた金木犀の香りは、四方八方に広がって、とっても遠くにいても、いつしか幸せな気持ちにしてくれる。 ![]() 金木犀の香りは、幼き頃の町内の子供会の秋祭りを思い出させる。そんなさなか、アパートの部屋の窓からは、近所の子供たちが獅子舞をかついで町内を「おおきなこえで、わっしょい、わっしょい」とみんなでかけ声をかけながら通り過ぎるのが見えた。その様子は、私の子供のころと比べると随分と寂しくなったと感じた。 昔と言えば、町内の秋祭りは、小さな集会所に同じ小学校の低学年から高学年まで、更には小さな子どもたちを連れた家族など、沢山の子供たちが集まった。みんなで神輿や獅子舞をかついで、ドンドン、カッカッと太鼓を鳴らしながら、決められた時間に金木犀の香りが舞う町内を一周する度にお菓子がもらえるのが何よりも楽しみだった。 第2次ベビーブーム生まれの私は、近所に同級生の友達や、面倒を見てくれる高学年のお兄さん、お姉さんが沢山いた。低学年の頃は、獅子舞のうしろの胴体の布しか持たせてもらえなかったが、獅子舞の頭やお神輿を操れるちょっと大人に見える高学年が羨ましく、早く大きくなりたいと思った。 子供は昼の部、そして夜は大人のお祭り。日曜の夜に町内の大人たちが楽しそうに酒を交わした宴会の後、決まって、手作りの大きな神輿を一度だけかついで町内を回った。その姿は勇ましく、いつものお父さんや近所のおじさんがかっこ良く思えた。 大人も子供も一緒になって笑顔で集う小さな町のお祭りは、なによりもあたたかな時間が流れていて、近所の様子をみんなで分かち合う、都会の今では少なくなってしまった秋祭りの風景であった。今では私の育ったこの小さなこの町内は、高速道路の立ち退きで残念ながら消えてしまった。 ![]() 金木犀の香る季節、夏野菜もこのころには、真夏の輝きの色から、紅葉のように秋色に変化する。種がちょっとだけ大きくなってるけど、霜が降りる前までに収穫して、食べきれなかったら醤油で甘辛く煮て佃煮に。これも秋の香り。 ![]() ゴーヤもきれいな秋色に。中の種は熟してまっ赤々。 ![]() 土の中は、コガネムシの幼虫がそろそろ冬支度。 ![]() 地面の中の虫たちを傷つけないように、地豆(ピーナッツ)の最後の収穫。塩ゆではビールの最高のおともになる。 ![]() 今年はひといちばい大きなサツマイモがどっさり。とれたてをいきなり食べるより、ちょっと置いておくと、もっともっと甘くなる。 |
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祖母の夏の珠玉の思い出
![]() センダンの木にたくさんの大きなクマゼミが我先にと大きな鳴き声を張りあげている姿は、今も昔もかわらない海辺の実家の風景です。 ![]() 私の母方の祖母は、母が小さい頃に夫を亡くし、3人の娘を立派に嫁にやり、ずっとそこで材木屋で事務をしながら、ひとりで暮らしていた。初孫の私が、来るのをいつも祖母は楽しみにしてくれていて、冷蔵庫には、蟹やら蝦蛄やらのごちそうが食べきれないくらいたんまりだった。 今年で、祖母が亡くなって26年になる。亡くなった時も、夏休みで次の日からの来る孫達の為にいつものように冷蔵庫はお楽しみの食材でいっぱいだった。 ![]() そんな思い出の祖母の夏の思い出は、ワタリガニ。目の前に浅い湾が広がる海では、大きな蟹が底引き網でたくさん捕れた。環境が変わって、コンビナートや埋め立て、空港が出来るなどして、今となっては珠玉の夏の高級食材となってしまった。 ![]() 祖母は、大きな鍋でどさっと蟹を茹でて、これも大きなざるで一気に冷まして身をしめて、扇風機の回る部屋の卓袱台の上にざるごとおき、好きなだけ食べさせてくれた。私たちは、口のまわりにいっぱいについた蟹の汁で痒いのを我慢して、取り合いをしながら、ぷりぷりの白く甘い身を口の中にほおばった。 ![]() 蟹のパスタやエビをエスニックに炒めてみたが、祖母の蟹の思い出の味にはかなわない。そんな祖母の27回忌に、祖父と祖母が眠るお寺の和尚さんから手渡されたお経の教本の中にこんな文章があった。 食作法(じきさほう) 食前の言葉 (合掌)本当に生きがんがために、今、この食をいただきます。 与えられた、天地の恵みに感謝いたします。(十念)いただきます。 食後の感謝 (合掌)ごちそうさま。(十念) 十念は南無阿弥陀仏を十回称えること。 かれこれいい歳になった私に、また、今も祖母が教えてくれたのかと。 そんなことを思った一瞬、あの時の祖母のやさしい笑顔が浮かんできた。 当たり前だと思って、忘れがちになってしまっている、感謝や思いやりの心や言葉をあらためて大事にしなくてはと思った夏の日の1日でした。 ![]() |
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